母方の祖母が倒れた。

裏庭で父が収穫した渋柿を干し柿にするべく、「夫婦の共同作業」と手際よくするする剥いていた母が、剥きかけの柿を放り出してあわてて車で転がりおりていった。

話はこうだ。

祖母は私の弟と暮らしている。叔父は祖母宅に毎日通っている。叔父がいつものようにやってくるとシャッターがあていないという。かくかくしかじか、家に入ると祖母が血を吐いて倒れていたというのだ。

自宅待機組となった私も気になって仕方がない。85歳になるが背筋ののびた若々しい祖母である。寝込んだ事等一度もない。母からの速報はそれをあおる内容で、やれ、病院が移転している、やれ、担当医がいないといわれ他の病院にいけといわれる。優しい母が珍しく声を荒げたという。

2日経ち、私が100個目の柿を干し終わった頃、車がガレージに入ってくる音が聞こえた。祖母からと、お寿司を受け取り、一緒に洗濯物を取り込んだ。もうすっかり、秋模様、今日もすっきりと三日月が見える。久々に帰ってきた母からついに事件の真相を聞いた。そもそも祖母は夜中の1時頃、家の中で転倒。腹部を強打しそのまま床に倒れ込んだ。音を聞きつけた私の弟がお越し、ベッドまでつれ戻った。朝方、ベッドに吐血しそのまま寝込んでしまい、シャッターをあける事ができなかったため叔父がくるまで祖母の状況がわからなかった。

駆けつけた母は祖母を病院へつれていったが、いつもの病院が出発前に電話を掛けているにもかかわらず移転した旨を教えてくれず、しばらく走り回り、到着すると、救急に専門の医者がいないからみれないという。

結局2日後の今日、いつものかかりつけのお医者様に予約をとった。

私は吐血した点がとても気になっていた。血を吐く人なんてテレビでしかみたことがないし、それはいつだって重大な事が体の中で発生しているサインだ。ましてや相手は老人。ちょっとこけただけで内出血やら骨が折れてどこかに突き刺さってる事だってあり得る。

が、叔父と母は「?」と思っていた。嘔吐物の色が鮮血でなく、ほんのり小豆色だったらしい。いわれてみれば血のよな色なのだが鉄分の匂いがしないという。祖母はステロイド治療で糖尿病を患っていたので甘い物を控えていた。2人が探偵のように家を一周し、予測クイズのように可能性のある食品を聞き取り調査しても夕食以外なにも食べていないという。(祖母はまだ、そこまでぼけていません。)

いよいよ母は祖母とともにお医者様へ。

母(アレキサンドラ)が問診票を書く。事細かに何が起こったのか、症状を書いていると横から祖母(クレオパトラ)が黙っちゃいない。

クレオパトラ「あんた、そんなん、かかんでいい!先生にあえばぜーーーーーーーんぶわかりはんねんから!」

アレキサンドラ「お母さん、先生は占い師ちゃうんですよ。ちゃんと説明しないと、何が起こったのか、どの検査が必要かわからないでしょ。」

 

母にたしなめられ、クレオパトラは検査室へ。

 

検査結果異常なし。

先生「クレオパトラさん、昨日なにか晩ご飯以外にたべました??」

もちろん、ノーだ。クレオパトラは叔父と母の聞き取り調査にそう答えた記録がある。

だが事件は起こった。

 

 

祖母(クレオパトラ)「先生、昨日チョコレート食べましてン!!!」

 

 

 

チョコレート?!?!?!?!?!お母ちゃん、なんも食べてないっていったやん!!!!!!

 

祖母「先生、絶対安静ですよね?」

先生「うーん、いや、絶対安静だめです。」

祖母「先生、でも安静しないとだめですよね?」

先生「いや、安静はだめです。普通に生活してください。安静はだめ。笑」

祖母「先生、なんか痛み止めうっておいてください。」

先生「いや、だめです。必要ないです。」

祖母「んじゃ、なんか薬とか。」

先生「うーん、今日なんか家で飲んだ?」

祖母「ロキソニン」

先生「ほな、それだしとこか?」

 

祖母はすっかり元気になって帰ってきました。MRIで脳がピカピカやと先生にいわれていい気分のようです。うどんとお寿司をもりもり食べて帰ってきましたとさ。

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

angella tomato
info@angellatomato.com