刺繍じゃないよ、ローガンペイントアートの魅力

アーメダバードから車で6時間もかけて訪問することになったワケ

アートが好きだ。美しいものには心を惹かれる。理解不能であっても自分の凝り固まった概念を壊してまた再生してくれる爆竹みたいなもの。(シバ神みたいだね。)

先月、記念すべきグジャラート州最初のプロジェクトが竣工した。客先より「僻地の事務所なので、ビジターやスタッフが明るくなるようなアートがほしい」との要望があり、グジャラート人アーティストの作品もしくはグジャラート風景画の捜索が始まった。

アートは空間デザインの一部なので、その手のお勉強をしっかりしてこられた熟練のデザイナーがパスッと持ってきてスパッときまるのが通例。が、ここはインド(なのか大人の事情なのか)なかなかそうはいかない。道案内に付き添っているうちにいつの間にか私が現地調査団長になり、幾度となく飛んでくる客先からの駄目出しに日本から

「おい、あんこ、ひとっ走りいって来い!!!」

に「アイアイさー」といってしまったが吉日。この1ヶ月ほどムンバイとアーメダバードのギャラリー巡りに明け暮れていた。

「ここはインド。そう簡単にはいかない。」のだが、この経験を通して数々の素晴らしいインド人アーティストによる作品と出会うことができた。主にインドのアート教育は西ベンガルが中心だと思い込んでいたが、グジャラートのIMG_0634Maharaja Sayajirao 大学は大勢の世界に認められるインド人アーティストを排出しており、「子供が生まれたらエンジニアか医者になって欲しい」と願うインドの風情の中でも芸術を敬い、芸術を学べる高水準の教育施設が牛やラクダに囲まれたこの砂漠の地にある事に衝撃をうけた。

そもそも私は、画家でもあり、ファッションデザイナーでもある実母・アレキサンドラより「趣味が悪い」と豪語される、筋金入りの妙なセンスの持ち主である。(もはやそれはセンスとは言わないのであろう。)だがこれについては私の趣味ではなく、きちんとギャラリーの方にプロの目線でアドバイスを頂き、客先の要望に添って用意をした。提案はどれも空間にふさわしかったが、どれもこれも呪いのようにダメ出しがでる。

さてどうしよう。どうしよう。うーん。と、ぽちっとしたサイトに掲載されていた異様な存在感の布地を発見することになる。

 

刺繍?プリント?ローガンペイントアートとは

ローガンペイントアートは300年以上の歴史があるといわれる布地への装飾技術で、ペルシアからインドへ伝わっIMG_0628た。ひまし油を含むオイルを火であぶり、ガム状にしたものに草木で鮮やかに着色(ペイント)をし、掌をパレットにしてスティックでよく練る。練りながらタイミングを見計らってペイントを伸ばして線を作り、うまい具合に曲線を描きながら布に色を載せていく。布地に下書きは一切なく、伸縮性のあるペイントをフリーハンドで操り模様を造る。ペイントは1時間くらいで乾いてしまう為、制作は時間との闘い。ペイントがかわく前に布地を折り模様を転写させて左右対称のデザインにする。さらにここから細かい点や線模様を加えていくのだ。小さな作品で1週間、大作になると1か月から1年もかけて丁寧に仕上げていく。

 

モディ首相も御用達

IMG_0629フリーハンドとは思えない、細やかで規則正しい細工から1つの大きなデザインが生まれる。伝わってくるエネルギーの力強さに対して色合いは優しい。なんとグジャラート出身のモディ首相も各国の来賓へのギフトとして好んでローガンアートを選んでおり、2014年にはアメリカのオバマ大統領にプレゼントしたことでインドの代表紙『Times of India』で大きく取り上げられた。

 

悲しいほどの認知度の低さ

社内外で友人に聞いたが他の州で知っている人は0、グジャラート人の友人や地元のアーティストにインタビューをしたが残念すぎるほどの知名度の低さでなかなか販売しているお店が見つからない。やっとアーメダバード市内のクラフトショップで5点ほど見つけた。青光りする蛍光灯の下、厳かにフレームに入っている割には「裸の王様」感が半端ない。夜中にモニター越しでさえ感動のあまりに思わず「うぉーーー(注:エイドリアーーーーーンのノリで。)」とうなった、あの感動がない。この程度のものだったのか。また振り出しに戻るのか。

イライラしてきた。笑 

こんな子供の夏休みの工作を2週間追っかけていたのか?!

いや。そんなはずはない。絶対に、そんなはずはない!!!

もはや、ただの仕事ではない。私の感性の真偽にせまる、一世一代の大捜査である。そう簡単には出会うことが許されない秘宝を見つけたのだ。この機会を無視してはいけない使命感にかられた。根拠のない自信と手ごたえを感じていた私は、嫌がるドライバーに頼み込み、翌朝4時にアーメダバードからローガンペイントアーティストが居る二ローダ村に向かうことにした。

アーティストにご対面

IMG_0696アーメダバードから車で西へ6時間。Bhuj空港よりおよそ車で40分北へ走るとグジャラート州ニローナ村へ到着。カッチ湿地帯の海沿いであるこの近辺は10月から3月の乾期になると雪のように真っ白に地面を輝く塩田の風景を見れることでも有名だ。道路も舗装されていない小さな村で牛が散歩をし、蛇使いが笛を片手にピロピロ歩く。埃の中に見える風景はなんとものどかで、古風で何にも頼って生きていない、その村だけで自給自足しているかと思わせる雰囲気であった。この村ではローガンペイントアート以外にも刺繍工芸、鈴工房があり親から子へ、その伝統をつないでいる。

お話をお伺いしたTraditional Rogan Art のスマールさんは物腰の優しい男性でした。2003年にローガンペイントにおいて国家栄誉賞を受賞したアーティストで彼の一族が世界で唯一、ローガンペイントの技術を後世に伝承している。弟子達が村におり、ドット描きなどの単純作業以外は一切作品に触れさせないという。ただ販売だけでなく、訪問者には必ずデモを見ていただきローガンペイントの技術を目で見てもらうという。棒の先についたガムを上手にひっぱって伸ばして線にして、丸くして、模様がくるくる布地の上に現れた。調子に乗って、やらせてくださいといってみた。お花の周りの点々を打たしてもらったのだが、まんべんなくペイントの乗った立体感のある点ではなく、どうしてもかすれてしまう。スマールさんはいちいちギャースかうるさい私を笑顔で受け入れてくださり、訪問を喜んでくださった。一見の価値があります、ローガンペイントアート。そして万人がなせる技ではございません。

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「Tree of life – 生命の樹」

無二の親友。必殺・2枚貝用と、今回同行してくれたドライバーさん、そして自分用と併せて4枚連れて帰ることにした。どれもペイントの心地よい自然な香りが漂って、それは自分を正しい場所に連れ戻してくれる。帰りのフライトの待ち時間、香りで覚醒したかのように客先への提案書を手早く仕上げた。

これであかんかったら、もう飾る絵、ないで。笑(私が描いたろかぁ?)

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「生命の樹」は力強く、誇り高く。

私のインド生活をさらに彩る、お守りとなるでしょう。本当にマクドナルドもバスキンロビンズもない田舎だった。自分の大事に思っている方みんなに見せてあげたい。

なのになぜか、また行きたいと、

既に心は奪われて。

 

 

Special Thanks to:

Traditional Rogan Art : http://traditionalroganart.com/

Mr.Khatri Sumar Daud ( Rogan Paint Artist, Natioanl Award winner of 2003 )

Mr.Bhavesh : My Favorite drive in Ahmedabad region who drove 12 hours for this visit. Honest , kind and supportive minded gentleman.

 

☆後日談はこちらから…